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中小企業M&Aにおけるファンド活用

近年益々増加する中小企業を投資対象とするファンド。事業承継の一選択肢としての第三者承継の受け皿として、その他中小企業の成長支援としてのファンドなど、中小企業M&Aにおけるファンド活用のポイントを検討しました。

ファンドについて

一般的に、ファンドは、投資家から集めた資金を企業へ投資し、投資先へのさまざまな支援(売上収益拡大、コスト削減等)を通じて、企業価値を向上させ、一定期間後(一般的には3〜5年後程度)のエグジット(他企業、他ファンドへの売却)を目指します。

ファンドの投資対象とするものは、あらかじめ決まっており、主に事業承継を対象とするものを事業承継ファンドと称することが多く、非上場株式を対象とするプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の一類型と考えることができます。

また、中小企業を投資対象とするものの中には、「事業支援ファンド」、「成長支援ファンド」のように、事業再構築や新規事業の立ち上げ支援など、事業承継ファンドよりも広い中小企業を対象とするファンドも存在し、近年においては株式を投資対象とするものではなく、メザニン(劣後債や優先株式といった配当、残余財産分配や議決権等に一定の制限をもうけた債権と普通株式の中間的な性質を有するもの)を投資対象とする、企業の支配権を直接の目的としないファンドも立ち上がってきています。

ここでは、中小企業M&Aにおいて、このようなファンドへの譲渡におけるメリット・デメリットをファンドの有する固有の特徴、機能から検討していきたいと思います。

ファンド固有の特徴・機能

ファンドが株主もしくは出資者になることによる一つ目の特徴は与信改善です。これは、主にファンドは単数の企業ではなく、複数の企業に投資することから、リスク分散が働くことから生じ、株主・出資者としての信用力が相対的に高いことにあります(それ以外にも、ファンドの実績やファンドの運用母体といった定性的な性格から生じるものもあります)。また、後述のパフォーマンスとも関連しますが、ファンド自身は出資先が倒産することが最悪のシナリオであるため、財務悪化時には追加出資などの追加支援が期待されるために、与信が改善するという理由もあります。この与信改善機能により、企業が単体で運営しているときよりも、債務の借り換えや新規投資の際の新たな借入が行いやすくなるといったメリットが生じます。

次に、もう一つの大きな特徴としては、パフォーマンス、つまりファンドの目的はあくまでも外部投資家から集めた資金を増やすことが目的であるため、理想的には投資した企業の企業価値を高めて、投資のエグジット(投資した企業の株式の売却等の投資回収)を行う必要があります。そのため、企業価値を高めるための施策については、商流の拡大からコスト削減、資産活用など、幅広くかつ具体的に検討、実行していく必要があります。

逆に言うと、パフォーマンスが望めない投資対象には投資をしないことになるので、一部のファンドに買収された企業はすぐにリストラされてしまうといった(一部の間で持たれていると思われる)負のイメージについては、リストラすることにより企業価値が向上する、つまり、例えばリストラ部門が企業価値に対してプラスになっていなかった、コスト削減等により企業価値向上余地があったとプラスに考えることもできます。

加えて、上記のパフォーマンスとも関連しますが、ガバナンスの面においても、ファンド固有の特徴があります。それは、ファンドは外部投資家の資金を集めて運用していることが殆どであるため、こうした出資者・投資家への説明責任を果たす必要があることによることから主に生じます。取引先や従業員との関係や経費率等、パフォーマンスの要因となるものについて、ファンドは外部投資家へ説明責任を果たすことが必要になることに加え、外部から見て合理的なものに整えておく必要があるということです。

ファンド活用の具体的なメリット・デメリットについて

ここでは、中小企業M&Aにおいて、ファンド活用のメリット・デメリットについて説明します。

現経営陣が経営と株式を引き継ぐMBO(マネジメントバイアウト)はファンドの活用が最も検討されやすいケースかと思われます。現経営陣に株式を引き継ぐ十分な資金が無く、金融機関から株式取得資金を借り入れたい場合、ファンドの出資を伴っていると、これが可能になることがあります。また、MBOの他にも、事業構造を大きく転換したいといった、金融機関にとって与信判断が難しくなるようなケースにおいても、ファンドの出資により実現が可能になることがあります。このように株主構成や事業構造の大きな変革が必要な場合においては、ファンド活用のメリットが大きいと言えます。

また、現在の取引関係や地元コミュニティなど利害関係者(ステークホルダー)と一定の距離感を保ちながら事業再構築や事業拡大を進めやすいというメリットもあります。さらに、取引先との関係の再構築、保有資産の有効活用等、既存の関係や状況の見直しが現行の体制では難しいと考えられるものについて、ファンドの活用により、これらが実行しやすいといったメリットもあります。加えて、すでにファンドが投資している企業とのシナジーやファンドの親母体やファンド独自のネットワークを通じて有する企業ネットワークとの提携を通じて、新たな商流や取引関係の構築が可能な場合があることもメリットとして挙げれらます。

他方、デメリットについては、ファンドには必ず投資回収(エグジット)が伴うため、いつかは何らかのかたちで再譲渡されることが最大のデメリットとして挙げられます(IPOといった株式上場によるエグジットも可能性としてはありますが、中小企業への投資を行うファンドにおいては稀であると考えます)。そのため、あらかじめ投資回収(エグジット)について、その期間、対象として考えうる先について確認しておく必要があると考えます。

これらメリット・デメリットをよく吟味することが、ファンドの活用を検討する際には重要です。

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